★6月例会開催
★今後の主な活動スケジュール
横浜開港記念日に6月例会が開催されました。
入梅の便りが聞こえる季節になりましたが、6月2日日曜日は横浜市民の開港記念日祝日にもあたります。横浜公園は開港記念日イベントと上向きベイスターズの野球開催日と重なり多くの人出ににぎわっていました。
6月例会は特別講演者松尾光先生を迎えての例会日でもあり、会員、ゲスト参加者を加え113名参加の盛況となりました。
(会員99名、ゲスト14名)
例会の司会進行は上野事務局長
開催のあいさつ 木村高久会長
先月は23~24日とバスツアーが開催されました。辛酸と忍耐を強いられた若き日の家康の足跡をたどる旅ということで、天気にもめぐまれ有意義な旅行を実施することができました。参加者並びに関係者の皆さまにお礼を申し上げます。
また本日は会報78号が発刊になりました。大変充実した内容だと思います。お帰りになられたらご覧いただきたいと思います。(松尾光氏の特別寄稿掲載)
そして本日はなによりも松尾光先生の講演をいただくということで皆さん大いに期待をされていることと思います。先生には28年度の6月例会にもお話をお聞きしました。その折りは江戸に鎖国はあったか、ペリーは突然やって来たのかといったような内容でしたが、今回は「コトバを創り、話したように記す―古代びとの挑戦」と題した大変興味深い内容です。どうぞお楽しみください。
◎6月の例会発表。
木村 高久さん 演題「開国と横浜開港の真の功労者は誰か」
「開国と横浜開港の真の功労者は誰か」 評
今日は奇しくも横浜開港記念日に当たる日ということで、まさにぴったりのテーマをお話しいただきました。開港に至るまでの経緯とその過程、結果を踏まえ、これに絡む登場人物を一人ひとり検証して、結論として一番の功労者は岩瀬忠震、併せて堀田正睦、井上清直ではないかとのことでしたが、私もまったく同感であります。話の内容もまとまっており大変良かったと思います。
*発表の詳細は講演者のレジュメをご覧ください。⇒研究発表のページ
特別講演
早稲田大学エクステンションセンター講師 松尾 光 氏
◎講演のポイント
古代びとは圧倒的な高質で多量の中国の文化・文物に接した。これを急ぎ受容・吸収をしようとする時、そこには歴然とした文化的水準の差があった。相手の言葉の意味がまったく理解できない。同じものを持たず、同じ経験のない者には想像すらできない。それは明治維新の頃、欧米の書物にある言葉が日本語になく翻訳できなかったことと類似する。できないからeconomyを経世済民という言葉から経済と訳した。同様に多くの言葉がつくられた。日本にはない考えを柔軟に思考し、読み取りその語意を汲んだ訳語をつくった。「ない」ものを「ある」と知らせようとする人がいたからいまの日本がある。江戸から明治への時代転換が急務であったように古代びとも同じ経験をした。
古代びとは日常にはない漢字の世界に接し、可能な限りそれにあたる言葉・思考を表す日本語を創り出していった。当時使っていた言葉は大変少なく、色ならば古代びとが識別した青・赤・白・黒しかなかったが中国から学んだ言葉を取り込み茜(あかね)、紅(くれない)といった日本語をつくった。眼で見る言葉には「みる」しかなかったので、見・看・観・診・覧・察を「みる」と訓(よ)んだ。中国の単語を持ち込んでも読めなければ役に立たない。だから自分の頭脳で中国の文化を読み取り、理解しようと奮闘した。漢字の意味するものを想像して、それに見合う日本語を和訓としてつくった。新しく日本語をつくるか、漢語にあたる状況まで自らを高めるか、そのどちらかを達成しなければ日本が文化を摂取したことにならないからである。
文の表記についてだが、書記の変遷があり、まず日本語文の表す漢字を順に置いていく表記。次に意味で読む漢字と字音だけの漢字を組合せる表記、さらに一字一音のすべて表音文字のみ表記が行われた。しかしこの一字一音で表すことと漢文を崩して表す表記は並行して行われたようだ。
こうした表記において松尾氏が一つ解せないことがある。それが『大日本古文書』にある757年の孝謙天皇の宣命小書体である。表意文字として読む漢字を大書し、一字一音の表音文字を小さく書く文章だ。大変わかりやすい文章であり、この弁別の知恵が成立しているなら、古事記序文の愚痴(倭語を漢文に翻訳する作業が大変)などないはずだが、なぜ広く採用しなかったのかわからない。
最後に我国がいまの日本語表記を捨てるという危機があった。明治になって西洋文明が入ってきたため、漢字を捨てて仮名文字か、ローマ字にするかということが真剣に論議された。しかしそうはならなかったのは方言という問題である。関東で「かった」は買うだが、関西では「かった」は借りたの意味で、買うは「こうた」という。中国や韓国の漢字問題を考えるにつけ、我々はそうはならなくて良かったという話である。
松尾先生からの歴史を学ぶ者へのアドバイス
「歴史とどう取り組み、どうまとめるかは、ひとえに“発表すること”です。発表しようと考え、まとめようとすることから始まります。まとめようとして苦しみ考えていると天使が降りてきます。思いを課題にしないことが一番いけないのです。」
参加者の多くを魅了した松尾先生の講演
「話は解りやすく、具体的で勉強になりました。こうした視点で歴史文化を捉えることの大切さを教えられました。」
「古代びとがもがき苦しみ今に繋げてくれなかったら、日本の歴史は変わったかもしれない。列強に侵略を許していたかもしれない。すばらしい話でした。」
「話を聞きながら一つのオランダ語に杉田玄白と前野良沢が悶々と悩み続ける姿を想像しました。歴史は深いなー」
「日本語がいまの形にたどり着いたというのは、我々の祖先が賢い選択をしてきたのだと思う」
*講演録…松尾先生に了承いただきレジュメを研究発表のページに掲載しています。なお無断転載は固くお断りいたします。
◎来月7月例会(7月1日(月)開港記念会館)の発表者と演目
真野信治さん 演題「チンギス・カン一族とその系譜」
古谷多聞さん 演題「シベリア出兵・Siberian Intervention」
*発表の詳細は⇒「横歴 例会のご案内」ページをご覧ください。
*7月例会は7月1日(月)です。
「パワーポイント・エクセルの基本」パソコン講座開催のお知らせ
7月例会日の午前中、パワーポイント・エクセルの原稿制作を学ぶ講座を実施いたします。ご希望の方は6月17日までに班長さんへ申し込みをお願いします。
●開港記念会館1号室
●午前9時30分~11時(90分)
●パワーポイントまたはエクセルのどちらかをお選びください。(双方は不可)
●参加費 テキスト代500円
●参加条件として、ご自身のパソコンにソフト「オフィス」が搭載されていること。ワード程度の文字入力ができる方。
*ご自分のノートパソコンで覚えたい方はご持参ください。ノートパソコンがない方でもご参加いただけます。
8月の例会はありません