[11月の発表者]


歴史にはどれだけの嘘が隠されているのか?
11月例会が行われる頃にはアメリカ大統領が誰になるのか決まっているだろう。4年前の大統領選から、政治における「嘘=フェイク」がクローズアップされるようになった。
我々は、情報不足が嘘を生むと歴史で学んできた。ネット社会は誰もが素早く手軽に情報を入手できるので、嘘が蔓延するなど想像もしていなかった。ネットは嘘を悪用する道具にもなるが、使わないと社会が成り立たなくなっている。
大事なことは真実がどこにあるのかを見抜く受け止める側の資質になる。横歴会員はこの資質を肥やすために歴史を学んでいる。11月の発表はそんなことを考える題材を用意しています。ソーシャルディスタンスもしっかり準備していますので、大勢のみなさんの参加をお待ちしています。

発表者のみなさんにお話のポイントをお聞きしました

長谷川憲司さん 演題「近代日本が生んだ世界的細菌学者 野口英世の実像」
教科書にも載った英世は偉人or凡人?
コロナ自粛中は家に閉じこもることが多くなり、他人との交流も少なく、頼まれる仕事もなく、生活に張りがなく、自身の社会性が失われるような思いです。とにかく好きな本を読んで過ごす毎日でしたが、やっと待ち遠しい例会が再開され、ついに入会して初めての発表となります。大学が仙台でしたので、私の歴史研究は東北にスタンスをおいて取り組んでいます。そこで発表の題材は「野口英世」です。私たちは素晴らしい化学者と習いましたが、果たしてどうなのか?新型コロナのウィルス開発が望まれていますが、英世もワクチン開発に焦っていたと言われています。医学研究者の一人として、その心の内を探ってみたいと思います。

斉木敏夫さん 演題「宇佐八幡と八幡神」
ハタと気付く八幡ははちまんorやはた?
コロナ禍のため横歴も私が主催している「日本美術史同好会」も休会を強いられています。毎日家の掃除や自室に閉じこもり、パソコンをにらみながら自習の日々を送っています。
今回は昔の人がコロナ撃退を願うなら唱えるであろう「南無八幡大菩薩」の「八幡神」です。
よく口にはするが、この「八幡大菩薩」とは何だろうということから研究することになりました。調べてみると元々は「やはた」と呼んでおり、秦氏に由来するのではということが判りました。以来、武神として信仰され全国に広まっていったお話をしたいと考えています。
◆過去の発表テーマ
「仏像の変遷その1-飛鳥・白鳳・天平時代-」(2008.3)
「山田寺『仏頭』の数奇な運命」(2009.2)
「奈良の大仏の素材の産地」(2010.2)
「仏像の変遷2」(2011.2)
「仏像の基礎知識」(2012.2)
「藤末鎌初の仏師、運慶、快慶」(2013.3)
「東大寺を復興させた俊乗重源」(2014.3)
「菩薩となった叡尊と忍性」(2015.3)
「円空と木喰」(2016.3)

高尾隆さん 演題「間宮林蔵は善人か悪人か」-歴史は後世に脚色される
まじめな官吏につけた称号は探検家orスパイ?

NHKの「大河ドラマ」における歴史考察には耐えられないことが多い。お金のかかる時代劇を映像としてしっかり作っているので観ているが、「おい、ちょっと待て」ということが度々ある。主人公が歴史的事件に必ず顔を出す。史実になくても駆けつけてどこかにいる。9歳のお江が一人馬に乗って京へ向かうなどという設定はどうしても観ていられないのである。しかし歴史を娯楽としてとらえ物語にしたのが歌舞伎の世界である。おかげでずいぶん騙されている。忠臣蔵しかり義経千本桜しかりである。そこはそれ。もっと心を広く歴史研究を楽しみなさいということだろうか?
◆過去の発表テーマ
「60分で学ぶ江戸264年」(2015.11)
「山岡鉄太郎と清水の次郎長の出会い」(2016.9)
「江戸庶民の憧れ・冨士講」(2018.5)
「富士講中興の祖-食行身禄について」(2019.4)